終活とは
「婚活」「朝活」「推し活」……最近は「〇活」という言葉がいたるところに溢れていますね。
そんななか、2009年に「週刊朝日」が誌上で初めて紹介したのが「終活」です。
同誌では「終活」について、
「葬儀や墓など人生の終焉に向けての事前準備のこと」
と説明しています。
これに対し、「終活カウンセラー検定」を主催している一般社団法人 終活カウンセラー協会では、「終活」を、
「人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ、今をより良く自分らしく生きる活動」
と定義しています。
「自分」という言葉が二度出ていることからも、終活に対してかなりポジティブな印象を受けますね。
一度きりの、かけがえのない人生を、最後まで自分らしく生きるための活動……
それが「終活」なのです。
終活でしておきたい10のこと
以下では、終活でしておきたい10のことを紹介します。
①エンディングノートの作成
エンディングノート(終活ノート)とは、自分にもしものことがあったときに、家族や友人に送りたいメッセージや希望などをまとめたノートのことです
エンディングノートに書くおすすめの項目には、次のようなものがあります(※ライフ・アンド・エンディングセンター『もしもノート(R)』から主な記入項目を抜粋して作成)。
①「もしものとき」に知らせてほしい人の連絡先(住所、氏名、電話番号、続柄など)
②所有財産……不動産、預貯金、株式/公社債、生命保険/年金保険、借入金/ローン
③医療関係
(1)病名の告知についての希望
(2)延命治療や尊厳死 についての希望
(3)臓器提供や献体 についての希望
④介護関係
(1)介護を受けたい人と場所(自宅で家族に/自宅でプロの手で/介護施設/その他)
(2)介護の費用(預貯金/生命保険/その他)
⑤葬儀関係
(1)葬儀の様式(仏式葬/密葬/家族葬/お別れ会/その他)
(2)戒名(法名・法号など/その他)
(3)葬儀の費用(預貯金/生命保険/その他)
⑥お墓のこと
(1)お墓を持っている場合(お寺の名称、所在地、連絡先)
(2)お墓を持っていない場合(お墓を持ちたいか否か/どのようなお墓を希望するか)
(3)お墓の費用(預貯金/生命保険/その他)
⑦遺言のこと
(1)遺言書(遺言書の有無、作成日、遺言執行人、保管場所)
(2)形見分けの希望の有無
ただし、エンディングノートには法的効力はないため、重要なことは遺言に書き記すことが大事です。
②お墓や弔い方の見直し
時代の流れはさまざまなものを変えていきます。先祖代々受け継がれてきたお墓のあり方や、故人の弔い方も例外ではありません。
そんななか、「墓じまい」に関するニュースが大きな反響を呼んでいます。つい先日、NHKでも特集で紹介されたので、ご存じの方も多いでしょう。
毎年の盆暮れにお墓参りに行きたいけれど、遠方すぎて体力的にも時間的にも負担が大きく、つい足が遠のいてしまう……
墓参りの負担を、自分の子どもや孫にも強いるかと思うといたたまれない……
https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20240524a.html
など、最近は少子高齢化に加えて地方の過疎化などの問題も重なり、お墓参りを苦痛に感じる方が増えています。
「お墓が重い」という気持ちを抱えている人が多い現代、残された家族が、「肉親への孝行」と「時間や体力の限界」との板挟みで苦しむことのないよう、生前からしっかり話し合っておくことが大切です。
また最近では「お墓のサブスク」という新しいタイプのお墓が登場しています。
考案したのは、三重県松阪市の仏壇仏具販売店「佛英堂」です。同社が提供するサブスクリプション型の供養サービス「偲墓」は、定額で一定期間お墓が利用でき、料金には永代供養代も含まれています。利用期間は百か日法要から十三回忌までなど、自由に設定することができます。
好きな時にお参りでき、引っ越しなどの際には預け先の変更や解約もできるため、「ご先祖様をより身近に感じられる」と好評のサービスです。お墓や弔い方を見直す際の選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。
③住まいの見直し
終活を考えるときに避けて通れないのが「終の棲家をどうするか?」という問題です。
ひとによって選択肢はさまざまですが、多くは以下の3つに絞られるでしょう。
- これまで住んでいた自宅に住みつづける
- 別の住居に引っ越す
- 老人ホームに入居する
さらに、終の棲家を選ぶ際には、以下のポイントを考えておくことも重要です。
- 自分の健康状態(介護が必要か否か)
- 親子・親戚関係(同居する家族がいるか、年末年始などに親戚が集まることがあるか)
- 賃貸マンションや老人ホームの場合、賃料や利用料を無理なく支払いつづけることができるか
- どの場所で、誰に看取られながら最期を迎えたいか など
ほかにも、「これだけは譲れない」という自分の希望を明確にし、家族とも相談しながら、より快適で居心地のいい終の棲家を探しましょう。
④介護の準備
厚生労働省の「介護保険事業状況報告(月報・暫定)令和5年12月分(10月サービス分)」によると、在宅で介護または要支援者向けの介護予防サービスを受けた人は約425万人、施設に入所してサービスを受けた人は約97万人、合計で522万人となっています。同年末時点の65歳以上人口が3624万人のうち、14%が介護を受けていることになります。
また、健常な状態から要介護状態に移行する段階、いわゆる「フレイル」の状態にある高齢者も増加しています。そのため終活では、「自分が介護を受ける立場になったとき」のことも考えておく必要があります。ポイントは以下のようになります(()内は選択肢の例)。
- どこで介護を受けたいか(自宅、介護施設など)
- 誰に介護をしてもらいたいか(家族、訪問介護員(ヘルパー)など)
- 介護費用の拠出方法(預金、個人年金保険、iDeCo(個人型確定拠出年金)、家族からの資金援助など)
- については、介護状態になっても自宅に住みつづける場合、バリアフリー化のためのリフォームも検討する必要があるでしょう。一方、介護施設への入居を希望する場合は、早いうちから空きがある施設を探しておくことが大事です。とくに、特別養護老人ホームは費用が安く人気があるため、3年以上待たされることも珍しくありません。
2.3についても、健康なうちに情報を集めたり、ある程度の準備をしておくと、自分だけでなく家族も安心でしょう。
⑤不要な物の断捨離
断捨離は、今すぐに実行できる終活です。長年愛用した品々を処分することに抵抗がある方も少なくないと思いますが、終活における断捨離には、以下のようなメリットがあります。
- 部屋全体がきれいになる
- 不要な物を捨てることで気持ちを入れ替える
- 老後生活の快適性を高める
- 亡くなった後、家族への負担を軽減できる
ここで、とくに重要なのは4です。
亡くなった自分の身体は荼毘に付されても、自分が使ってきたものは、重さや形のあるものとしてこの世に残りつづけます。断捨離をせず、膨大な品々を残したまま最期を迎えるということは、それらの処分を家族に押しつけることにほかなりません。
その労苦があまりに大きいと、
「こんなことなら、生きているうちに整理しておいてくれればよかったのに……」
「私たちだって自分たちの生活で手いっぱいなのに、あまりにひどい仕打ちだわ」
など、大事な家族から死後に恨まれてしまうことにもなりかねません。
このような事態を回避するためにも、健康で体力のあるうちに不要な物を処分するのが望ましいでしょう。
⑥デジタル終活
デジタル終活とは、「パソコンやスマホなどの電子機器内のデータ及びインターネット上にあるデータ(あわせて、「デジタル遺品」と呼びます)に対する死後の取り扱いについて考える活動のこと」です。
(参考「日本デジタル終活協会」:https://digital-shukatsu.net/degital_end_of_life/)
「デジタル遺品」については、2018年7月から放送されたドラマ『dele』(ディーリー・テレビ朝日系)で大きく取り上げられたのでご存じの方も多いと思いますが、具体的には以下のものになります。
- パソコン内に保存されたデータ
- スマホ内に保存された写真や動画
- SNSやインターネットバンキング等のネットサービスのアカウント
- 動画、音楽、電子書籍などの配信サービスのアカウント
- GmailやOutlook.comなどWebメールのアカウント など
では、なぜデジタル終活が必要なのでしょうか。その主な目的は、次の2つになります。
- 個人情報やプライバシーの保護
- 葬儀や金融機関の手続きなどで遺族に負担をかけないため
個人情報やプライバシーの保護をするため
1.については、とくにショッピングサイトなどに登録したクレジットカード番号を放置したままにしておくと、ハッキングによる不正利用をされてしまう恐れがあります。
また、ひとには誰にでも家族にも知られたくない写真や情報があるものです。そういったデータについても、いまのうちに残すものと処分してもよいものとに整理しておきましょう。
残された家族が金融機関や葬儀の手続きを楽にするため
2.については、遺族が故人のデジタル遺産のロック解除ができないために、以下のようなトラブルが急増しています。
- スマホの連絡先にアクセスできず、故人の友人や知人に葬儀の連絡ができなかった
- 故人が金融機関に預けていた資産やネット証券の残高がわからず、遺産相続手続きが難航した
- 写真フォルダにアクセスできず、遺影用の写真が手に入らない
このようなトラブルを避けるためにも、自分が亡くなった後のデジタル遺産の取り扱い方法については、家族としっかり相談しておくとともに、先に触れた「エンディングノート」に記録しておきましょう。
⑦遺言状の作成
自分が所有する財産を、配偶者や子どもなどの相続人たちにどのように相続してほしいか。それを示したものが遺言状です。
生前に遺言状を作成しておくことで、以下のようなメリットがあります。
- 自分の希望どおりの相手に、希望どおりの金品を相続または遺贈できる
- 相続に対する自分の意思をはっきり示すことで、親族同士の相続争いを防止できる
- 遺言状につける財産目録によって、相続財産の内容や金額などを明確にでき、相続手続きがスムーズになる
当然のことですが、亡くなった後は相続についての自分の意思を示すことができません。古代から頻繁に発生していた、いわゆる「骨肉の争い」を防ぐためにも、しっかりと遺言状の準備をしておきましょう。
⑧資産の管理
上に書いた「エンディングノート」でも触れましたが、終活ではご自分の所有する資産を一つひとつ洗い出し、その内容がひと目でわかるようなリストを作っておきましょう。
なお所有資産には、以下のようなものが含まれます。
不動産、預貯金、株式・公社債、生命保険・年金保険、借入金(ローン)
リストアップした資産の状況は、家族に共有しておきましょう。そうすれば、相続の際にも資産のことで遺族が困ることはありません。
ただし、預貯金の残高や口座番号、パスワードなどは、誰かが無断でお金を引き出すなどのトラブルが起きる可能性もあるので、この時点では教えないほうが無難です。
生前に伝えるのは、資産の預け先や運用方法などの情報だけで十分です。もちろん通帳や印鑑類は別々に保管した方が安心です。
⑨老後資金の検討
幸福で豊かな老後人生を送るためには、今後の生活に必要なお金のことも考える必要がありますが、ではどれくらいのお金を用意すればよいでしょうか。
まずは支出面から見てみます。生命保険文化センターの「2022(令和4)年度 生活保証に関する調査」によると、「夫婦2人がゆとりある老後生活を送るための生活費」は月額38万円となっています。
https://www.jili.or.jp/research/chousa/8944.html
総務省の「2022(令和4)年度 家計調査報告」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支の可処分所得は約21.5万円でした。
収入21.5万円に対し、支出38万円なので、月額で16.5万円、年間で約198万円の生活費が不足することになります。
これを65歳から85歳までの20年間で考えると、198万円×20年=約4千万円の貯蓄が必要という計算になります。
この金額はあくまで平均額ですが、老後資金を考える際の参考にはなるでしょう。
この金額に比べて、自分の現在の貯蓄残高が多いか少ないか。少ない場合は、足りない分をどのようにして用意するか。夫婦や家族で相談するのはもちろんのこと、証券会社や銀行、FPなど「お金のプロ」に相談するのもよいでしょう。
⑩友人関係のリスト作り
「終活でしておきたい10のこと」の最後は、友人関係のリスト作りです。
なぜ終活で、友人関係のリストを作る必要があるのでしょうか。
その目的は、あなたにもしものことがあったとき、家族が友人への連絡をスムーズに行なえるようにすることです。
とくに遺族にとっては、葬儀を執り行う際の訃報の連絡や、葬儀の参加人数を把握するために必要です。
もし、家族に友人関係の情報を伝えていなかった場合、生前親しくしていた方に訃報が届かず、「お悔みや感謝の気持ちを伝えたかったのに……」と残念な思いをさせてしまうことにもなります。
ひと口に友人関係といっても、なかにはLINEやSNSでの繋がりだけで、お互いの住所や電話番号を知らない相手もいるでしょう。終活を機に、改めて連絡先を伺っておくことをおすすめします。
また、先の「デジタル遺産」にも関連しますが、現在は友人の連絡先をスマホのみで管理している方が多いと思います。家族にもわかるように、プリントアウトして保管しておくとよいでしょう。
〈リストに記入する項目(例)〉
- 氏名
- 住所
- 連絡先
- どのような友人関係か(学生時代からの友人、趣味仲間など)
- 入院など、もしもの時に知らせる必要があるか
- 葬儀に呼ぶ必要があるか、書面のみの通知でよいか
さて、ここまでは、終活(エンディングノート)に必要な内容やステップについて簡単にお伝えしていきました。もっと具体的に知りたい!と思う方には「誰でもできる!簡単な終活の具体的なステップ」についてお伝えします。
終活のために作っておきたいバケットリスト
バケットリストとは?
2008年に日本で公開されたハリウッド映画「最高の人生の見つけ方」。この映画では、大病を患い余命宣告を受けた2人の男性が「死ぬまでにやっておきたいこと」をリストに書き出し、それらを実現するために人生最後の旅に出るというストーリーです。
映画の原題: The Bucket List(“バケット(棺おけ)リスト”)とは“棺おけに入る(死ぬ)までにやっておきたいこと”を書き出したリスト、という意味です。
映画を観た人々を中心に、この言葉が日本でも広く認知されるようになったため、終活のなかでバケットリストを作成する方が増えています。
以下では、バケットリストの詳しい内容をご紹介していきます。
バケットリストを作るメリット
- 自分の人生を前向きに考えられるようになる
映画「最高の人生の見つけ方」の主人公たちもそうでしたが、バケットリストを作ることで自分の人生を前向きに考えられるようになります。
とくに終活は、遺言書の作成や身の回りの整理、葬儀の準備など、自分の人生の最期を見据えた活動なので、これまでの人生を振り返ることが多く、「何か新しいことにチャレンジしよう」という気持ちにはなかなかなれないものです。
しかし、バケットリストを作ることで未来に目が向き、「残された時間を思いきり楽しもう!」と明るい気持ちになることができます。
- 気持ちも身体も若返る
バケットリストを作りはじめたら、心身ともに若返ったというお話をよく聞きます。残りの人生でやりたいことを考えているうちに、いままで年齢やお金を理由に胸の奥にしまい込んでいた願いや希望が次から次へとあふれ出て、まるで子ども時代に戻ったようなワクワク感が芽生えてきます。
と同時に、「やりたいこと」を叶えるためには体力が必要です。とくに「海外旅行」や「登山」などは最低限、無事に行って帰ってこれるだけの体力をつけなくてはなりません。そのため、長めの散歩やジムなどでの運動を始める方もいます。お医者さんから勧められてしぶしぶやるのではなく、「旅行に行きたい」というはっきりした目標があるので、三日坊主にならずに楽しく続けられます。
このように、バケットリストを作ることで、気持ちも心も若返る効果が見込めます。
バケットリストの作り方
それではこの記事の最後に、バケットリストの作り方をご紹介します。
バケットリストを作るときに「やれること」「やれそうなこと」ではなく、あくまでも「やりたいこと」を書くということです。
たとえば「スカイダイビングがしたい」「満漢全席をおなかいっぱい食べたい」「世界一周旅行がしたい」「宇宙へ行きたい」……など、大金持ちでないと不可能なことや、家族や友人に読まれたら笑われると思うようなことでも、思いきって書いてしまいましょう。
「韓流アイドルの追っかけをしたい」「舞妓さんの姿になって、記念撮影をしてみたい」など、若い人のあいだで流行っていることでももちろんOK。自分の心を素直に見つめながら、自由に、思いつくままに「やりたいこと」を書いていきましょう。
バケットリストについては、「人生を最後まで謳歌したい!願いを叶えるバケットリスト」で紹介をしています。