腰痛は「平和で健康な老後」の大敵
日本は「世界一の腰痛大国」?
ここに興味深いデータがあります。WHOが発表した2023年の「世界平均寿命ランキング」です。
これによると、日本人の平均寿命(男女合計)は84.3歳、健康寿命(同)は74.1歳で、いずれも世界第一位となりました。
なお健康寿命とは、厚労省の定義によると「健康に問題なく日常生活が送れる期間」を指します。
また、平均寿命と健康寿命との差は「日常生活に制限のある不健康な期間」を意味し、日本人では男性で約9年、女性で約11年となっています。
この「不健康な期間」が生まれる原因の一つに「腰痛」が挙げられています。
そのため、「平和で健康な老後」を送るには、腰痛を予防・改善することがとても重要なのです。
たかが「腰痛」、されど「腰痛」
この記事をご覧になっている皆さんは、日常生活の中でこんな経験はありませんか?
・仕事で長時間椅子に座っていると、ひきつったような痛みを感じる。立ち上がってストレッチをすると少し良くなるが、座り直して数分経つと元の木阿弥
・とくに思いあたることはないのに、いつも腰がだるい。病院で診察しても異常が見つからず、処方された痛み止めや湿布薬でやり過ごしている
・引っ越しのときに重たい段ボールを持ち上げようとして、ぎっくり腰をやってしまった。腰の骨が折れたんじゃないかというほどの激痛で、仕事にも行けず、数日間寝込んだあと、再発を恐れて整体院に通い始めた
いかがでしょう? 当てはまるものがあったでしょうか?
上記のような症状は、けっして珍しいことではありません。なぜなら、腰痛はいまや日本人の3人に1人がかかっている「国民病」だからです。
一般に腰痛は、日本人の死因の上位を占める三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)などと違い、生命の危険もなく、緊急手術も必要ないので、「たかが腰痛」と軽く考えてしまう方も少なくありません。
しかし、なかにはぎっくり腰のように、身動きできないほど激しい痛みに苦しめられたり、原因不明の慢性的な腰痛に悩まされ、長年にわたってつらい生活を強いられている方もいます。
とくにシニアの皆さんにとって、腰痛は「平和で健康な老後」を脅かす厄介な存在です。
若い頃から仕事や子育てに頑張り、心身ともに成熟した熟年期を迎えて、「さあ、これから第二の人生を謳歌しよう!」というときに腰を痛め、活動を制限されるのは、なんとも残念なことですよね。
さらに腰痛の85%は「原因不明」で、「お医者様でも草津の湯でも」治すことが難しい厄介な症状なのです。そのため、日ごろから腰痛予防に努めることがとても大事なのです。
腰痛の予防や改善には、筋肉トレーニング(筋トレ)やストレッチがとても有効です。
以下では、その主な理由をご紹介します。
シニアの腰痛予防・改善にジムでの「筋トレ」が有効なワケ
腰を支える筋肉を鍛える
腰痛の原因の1つ目として、腰を支える筋肉(腸腰筋、腰方形筋、脊柱起立筋など)の衰えが挙げられます。そのため腰痛を予防するには、これらの筋肉を鍛えることが必要になります。
下の写真は「エクステンション」と呼ばれるマシンで、腰や腿など下半身を鍛えられるので、腰痛の予防や改善を考える人にぴったりです。ジム選びの際には、これらのマシンを導入しているかどうかを基準にするとよいでしょう。
筋肉の柔軟性を高める
腰痛の2つ目の原因は、筋肉の柔軟性の低下にあります。
40歳をすぎる頃になると、若い頃は柔軟に動いていた体の組織が徐々に弾力を失い、筋肉も硬くなっていきます。その結果、背骨や椎間板や腰椎への負担が増えて腰痛が起こります。
また、筋肉の柔軟性が低下すると、急性腰痛症(ぎっくり腰)にもなりやすくなります。慢性の腰痛と違い、ぎっくり腰は突然激痛に襲われ、数日から数週間ほど寝込むこともあり、仕事や日常生活にも支障をきたす恐れがあるため、ジムでの運動をはじめ、日ごろから筋トレやストレッチを生活に取り入れることが肝心です。
姿勢を改善する
腰痛の3つ目の原因に、姿勢の悪さが挙げられます。
とくにデスクワークやスマホ操作などで長時間同じ姿勢を続けていると、腰の筋肉が緊張して血の流れが滞りやすくなるため、腰痛を引き起こしやすくなります。筋トレやストレッチをすることで、これらの症状を改善する効果が見込めます。
なお、日常生活の中で腰に負担のかかる姿勢は、以下のとおりです。思い当たるところがある方は、今日からさっそく改善してみましょう。
・足を組んで椅子に座る
・床に横座りで座る(いつも同じほうの足)
・片足に重心をかけて立つ
・読書やスマホを操作するとき前のめりになる
・寝転んでテレビを見る
シニアの腰痛予防・改善に最適なジムの選び方
トレーニング指導の経験が豊富な有資格者が在籍しているかどうか
じつはスポーツジムのトレーナーになるために、特別な資格は必要ありません。
しかし、とくに腰痛の予防においては、適切な運動療法や人体に精通した有資格者のトレーナーに身体の状態をみてもらいながら、トレーニングの指導や助言を受けることで、大きな効果が見込めるでしょう。
とくに腰痛治療のエキスパートである「腰痛運動療法指導士」や「腰痛運動療法セラピスト」の資格をもつトレーナーは、
・腰のどこに痛みがあるのか
・どの動作で痛みが出るのか
・どういう運動をすればその腰痛が楽になるか
など、豊富な知識や医学理論に基づいた丁寧な所見や運動指導をおこなってくれるので、心強い味方になってくれること間違いなしです。
また、受付のスタッフが親切かどうかも、ジムを選ぶうえでの大事なポイントです。
ジムのチラシやネット広告には、たいてい若い男女の写真が使われているため、シニアの方の中には入会のハードルが高いと躊躇する方も少なくありません。
筆者の通うジムでも、入会を考えるシニアの方からの、以下のような質問が多いそうです。
「ジムは初めてなんですが、こんな年齢では危ないからと断られませんか?」
「若い人のように激しい運動ができなくても大丈夫ですか?」
「ジムでのトレーニングは、腰痛の予防にも効果がありますか?」
これらの質問に親切に答えてくれる頼もしい受付スタッフがいれば、入会したあとも何かと心強いでしょう。
オーダーメイドのトレーニングに対応しているかどうか
ひと口に腰痛といっても、その原因や症状、痛みの程度などは、一人ひとり異なります。つまり、腰痛の予防や改善のために必要な筋トレのやり方も、一人ひとり異なるということです。
筋トレのやり方が間違っていると、腰痛予防や改善の効果が得られないだけでなく、かえって悪化させるおそれもあります。その原因としては、次の3つが考えられます。
・筋トレのフォームが正しくない
・疲れた状態で筋トレしている
・筋肉の柔軟性が足りない
しかし、自分に合った正しい筋トレのやり方は、自分ではなかなかわかりません。そのまま自己流の誤ったトレーニングを続けていれば、身体にその癖がついてしまい、腰痛以外の症状を引き起こす恐れもあります。
この問題を解決するには、オーダーメイドのトレーニングに対応しているジムを選び、経験と知識の豊富なトレーナーに、自分に合った筋トレメニューを作成してもらうのがよいでしょう。
ジムによっては、通常の練習コースのオプションとして、「オーダーメイドレッスン」を受けられます。月会費とは別料金(1回あたり数千~1万円前後)になりますが、ジム通いのいちばんの目的である「腰痛の予防と改善」を実現するためにも受けてみる価値はあるでしょう。
健康でいるための食事の指導もしてくれるかどうか
最近のジムは、利用者のニーズに合わせたきめ細かいサービスを充実させています。なかでも「食事指導」はシニアのみならず幅広い世代から好評で、多くのジムで実施しています。
「医食同源」という言葉どおり、腰痛や病気を治療するのと同じくらい、毎日の食事は重要です。ジムによっては、食事指導の専門家である管理栄養士が担当してくれるところもあるので、ぜひ探してみてください。
食事指導の内容は、主に以下のようになっています。
・栄養に関する基礎的な知識
・糖質制限・脂質制限などを中心とした、日々の食事内容の指導
・一日の水分量や適切な食事時間
・外食の選び方
・目標に合わせた食事の計画管理
食事指導の料金は、基本料金に含まれているところもあれば、別料金のオプションとして用意しているところなどジムによってさまざまです。気になる方は無料カウンセリングで詳しい話を聞いてみるのがおすすめです。